俺は明日死ぬー。
死を宣告された者が、残された時間をどう生きるかて物語はゴマンとある。明日死ぬことになったら、最後に何をするかってテーマも民衆には固い。この手の話はー発当ると、類似品が多発するから厄介だ。どこもかしこもやれ死んだ、やれ期間限定で生き返ったと騒いでるが、この手の愚話は本質をわかっちゃいない
死に逝く者は、何もできない敗者だ。失われた希望を必死でもがいて探しても、指と指の間からこぼれていく。何も、救われない。これが、真実だ。
俺様に残された時間は、あと24時間あるかないかだ。明日の時間、いやもし仮にだ、カーチスが毎朝のジョギング日課としていた場合、いい感じに奴の体が温まるの大体7時、そこからシリアル&プロテインな食事をササっと済ませて、まあコーヒータイムも入れるとして、一緒にフルーツ盛りかズウィーツ好きならタルトは外せないはずだ。8時を回って、必身ともにフル回転すると…、。
俺が死ぬ時間は9時前だ。確実な読みだ。だが待てよ。場合によっちゃ、日付の変わった零時かっし丁度に迎えにくるかもしれない。そうなりゃ、もう24時間もないってこった!こりゃ、ヤベえぞ。これは結構大事なことだ。先に電話で確認して、カーチスが何時に来るか聞いたほうがよさそうだ。待て、誰に聞く?そりゃカーチス自身に聞けば話が早いがスケスケと殺される者が殺る者に聞くのは、間抜けだ。じゃあ、奴の側近に聞けばいいのか?ペドロに聞けば大体の察しはつくだろうが、素っ裸にして水風呂に閉じ込めた恨みは、まだ忘れてくれちゃいないだろう。新妻のパメラにはスクープ写真のプレゼントをしてやった。デロデロに酔ったペドロに、萌え娘をはべらせて、豪華な入浴タイムを満喫した代償はでかい。奴はきっと今頃、自分の弁護に必死だろう。
しょうがない、ミルズに頼むしかなさそうだ。その前にだ。死ぬ前にアレをしておこう。明日死ぬことになったら、最後にすることだよ。
7月6日 0:18pm
シゲキ・バーキンのアパートメントにて
人並みの恋をしたいと思ったことは皆無だが、人並みの恋心を抱いてしまうことはある、不覚にも。それが、どれだけ無意味で不要な糞か理解しているっるかなったもりだ。けど、不思議だ。死ぬとなったら、無意味なことが味を帯びてくる、勝手にー人歩きしてどこその活力としてやがる。人間ってのは、少しでも生き伸びようと本能が働くことがあるのかもしれねぇなと、少しだけ感動した。自分にというより、生命という活動にだ。我ながら、思考に異変を感じてきた。
かなり違まわしに云ったが、これ限界がだ。これ以上は、俺様の口からは云えねぇ。最近、あの図書館に入り浸っていることも、意味もなく哲学書を読むことも。ショーペンハウエルとニーチェを無駄に読んだ。その話題なら、ー週間はネタが尽きない。あ、一週間ももたないか…。ダメだ、ますます悲観論者になっちまったぜ。なんでもいい、あの図書係の娘と話がしたいんだ!プロンドの髪に触ってみたい。それが叶えば、死ぬ前に、死んでもいい。
異様に、熱っぽい。火照った状態で本を選ぶ。サルトルを持って、受付へ行く。右手と右足を一緒に出しそうな位に、テンパリ気味だ。
デッカー「こんにちは」
バーキン「やあ」
デッカー「今日も、難しそうな本ですね」
バーキン「俺、バカだからね。本を読んで、勉強ってわけさ」
デッカー「バカなのは、私です。この仕事をしてるのに本を読んでもさっぱりわからなくって…。ハーレークインしか読まないんですよ」
パーキン「凄いじゃないか!ハーレークインは最高の哲学だ。現代のバイブルだよ」
デッカー「本当ですか?」
バーキン「本当がだとも」
デッカー「嬉しいかも。あまり/められたことがないから…」
バーキン「名前は?キミの名前は」
デッカー「プレートに書いてある…」
バーキン「名前だ」
クラウディア「クラウディア・デッカー」
バーキン「クラウディア、外に出ないか?」
クラウディア「まだ仕事が··…」
パーキン「大事な仕事?」
クラウディア「全然」
バーキン「じゃあ、平気かい?」
クラウディア「どこに?」
バーキン「外だよ」
クラウディア「外の世界?」
バーキン「そうさ。世界は広がっている」
クラウヂア「私を、逃がして…」
バーキン「おいで」
俺様は、しっかりクラウディアの手を握って走った。信じられない、こんなに美しい女が、一緒の時間を共にしている。時間が停止している感覚だ。この時間は永遠に続くような、そんな感覚は初めだ。胸がバクバクして、ちょっとばかりトキメいている。シアトルタワーの見える公園が見えると、走るのをやめた。息が切れて、言葉が言葉にならない。頬が少し上気したクラウヂアは、ー段と美しく可憐だ。俺康のは、まだ俺様のままなのか?
鏡に映った自分の姿は、もう完全に笑顔(サマヨル)だった。彼女(クラウヂア)の眼には、まだ俺様が俺様であった姿で映っているのだろうか。
クラウディア「こんなに走ったのは、運動会以来かも。苦しい…」
バーキン「平気?」
クラウディア「平気。でも、気持ちょかった。走ったら、すっきりした」
バーキン「信じられないよ」
クラウディア「本当。仕事をサボるなんて、初めての経験」
バーキン「そうじゃないよ。こうして、キミと一緒ってことがだよ」
クラウディア「嬉しかったの、いつも考えていた。どこかの知らない誰かが、迎えに来て外の世界に連れ出してくれるって…」
バーキン「キミも同じことを」
クラウディア「バーキンさんを初めてみた時に…」
バーキン「シゲキって呼んでくれ」
クラウディア「シグキを見て、感じたの。この人だって」
パーキン「クラウディア、聞いてほしい。俺にはそんなに時間がないから、この科白はもう二度と云わないと約束する。キミにこの言葉の全てを捧げる。僕は今から3ヶ月前にキミを見てからずっと、愛していた。そう、俺はキミを愛していることに気付いた。それからともの、ずっとキミのことを考えていた。仕事の最中もそうさ、思いっきり業務に打ち込んで汗を流して忘れようとしたけど、駄目だった。俺の中にキミが住んでしまったんだ。けど、この想いは今日顧いが通じたんだ。キミを心から愛している!」
クラウディア「その笑顔、気持ち悪いんですけど…
どこからともなく、俺は金属バットをしっかりと握って、フルスイングした。クラウディアの脳は、初々しいピンク色で美しかった。桜が散ったようだった。死ぬ前は、何もしないことだ。
7月6日 2:52pm
シアトルタワーにて。
ミルズに招待されて、一流のレストランに来た。最後の晩餐…、その可能性もなくはない。極上のインを飲んで、奴の懐を空っぽにしてやることを目標として掲げよう
バーキン「改まって、何だ?」
ミルズ「アンタの気持ちを察するに、正装するには気が引けたよ」
バーキン「ワインは俺が選ぶ」
ミルズ「構わないさ」
二人で空けたワインは、10本を超えた。
ミルズ「これだけ飲みゃ、味は一緒だ」
パーキン「まだ残ってる銘柄があるぜ」
ミルズ「パーキン、グラスを置いてくれ。今日は、アンタにブレゼントがある。そのために呼んだんだ」
バーキン「裹がありそうなプレゼントだな」
ミルズ「そうよ。裹も裹。裹から入手した物だ。好きなのを選んでくれ」
バーキン「ピルケースだと…。コレは何だ?」
ミルズ「開ければわかる」
バーキン「…ほう。ふざけてんのか?」
ミルズ「アンタには必要物だ。赤と青のカプセルは、意識がプッ飛んで錯乱する。タワーの展望台で飲めば一発だ。黄色と紫のカプセルは、体中の血が吹き出る。1分で血液が無くなる。白と黒は、笑顔の促進を加速させる。飲んで5秒で、BOM! 木っ端微塵だ。どれでも好きな特効薬を選べばいい」
バーキン「殺られるより、マシってことか?」
ミルズ「カーチスを侮るな」
バーキン「昨日会って、侮れなくなったぜ。奴は、最凶だ」
ミルズ「同じ死の痛みでも、特効薬の方が楽だ。悪いことは言わねえ。
まよわず飲め」
バーキン「なら、全部飲んだらどうなる?」
ミルズ「馬鹿を云うな」
バーキン「じゃあ、馬鹿を見てろ」
ミルズ「やめろ!バーキン!」
バーキン「フンガッ。…3、4、5、6、7?10秒経った」
ミルズ「無茶な…」
バーキン「俺様に偽薬は通用しない」
ミルズ「安打製造機とは伊達じゃないな、アンタのしぶとさに乾杯だ」
バーキン「ロマネを飲むんなら、先に渡せ。カーティスへの直通電話を」
ミルズ「図星か..。カーティスはアンタからの連絡を待ってる。俺は、只の使いだ」
バーキン「違うな。無能な使いだ。見極めを開違えると、次はオマエの首を特大で飛ばすぞ」
7月6日 10:30pm
リストランテ・ダイオキシンにて。
Scanned and transliterated from the 2018 SUDA51 OFFICIAL COMPLETE BOOK.